2023.05.29
「持ち家vs賃貸」結局どっち?
「持ち家vs賃貸」結局どっち?"利回り"で見る結論
配信 2023年5月24日 11:30更新 2023年5月24日 19:54
東洋経済オンライン
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自分が今住んでいる賃貸住宅を買うとするならばいくらになるか、考えたことがあるだろうか。
例えば、ワンルームマンションに住んでいるとしよう。都区部はマンション条例という建築規制があるので、通常25㎡以上になる。家賃は計算しやすいように10万円とする。その住んでいるマンションを買い取る金額は家賃の25~30年分になる。それを月数にすると、300~360カ月なので、これを家賃にかけてみる。3000万~3600万円で買えることになる。
独身でなく、2人以上で住んでいるなら、50㎡以上で、家賃20万円とすると、上記の2倍になる。これを購入すると6000万~7200万円となる。
金利総額を上回る「住宅ローン控除」の恩恵
では、これを購入した際の月の返済額はいくらになるか。今の住宅ローン金利は0.4%ほどなので、18.4万円となり、家賃より安くなる。なぜなら、家賃の30年分で買えるのに、住宅ローンは35年で返済するからだ。
金利がある分、総支払額は7717万円で、金利総額は517万円となるが、住宅ローンを借りる人はほぼ全員が住宅ローン控除という減税策を適用されている。これは借入額の0.7%が還付される仕組みなので、7200万円×0.7%の50.4万円が13年間もらえる。なので、655.2万円の収入が生まれる。
1人当たりの上限は5000万円だが、夫婦共働きであれば合計1億円まで可能だ。この655.2万円は金利総額の517万円を上回っているので、収支は138.2万円のプラスとなる。これは「マイナス金利」ということで、通常お金を借りると金利を支払うところを、借りた額が増える分だけお金がもらえることを意味している。そのくらい、国策として「持ち家を取得したほうが得ですよ」と促しているわけだ。
この結果として、日本全国の85歳以上の持家率は85.2%で、都区部でも75.4%にも及ぶ。
ちなみに、J-REIT(日本版不動産投資信託)の入居者調査で、家賃は世帯年収の何%分払っているか調べた結果、その平均は25%だった。家賃20万円の世帯は年間240万円の家賃を払っているが、これが年収の25%相当が平均なので世帯年収は1000万円弱になる。
この世帯が住宅ローンを借りようとすると、月返済額が25%までは少なくとも貸してくれる。なぜなら、銀行は年収比率25%の人は延滞確率がほぼゼロであることを長年の貸し出し実績で知っているからだ。
「自分がローンを返せるか心配」という人がいるが、これは取り越し苦労で、できなかった人などほぼいないので、心配する必要などないのだ。銀行が貸してくれるというなら、「自分はそこまで返す能力があるのだ」と理解したほうがいい。
家賃20万円が月収の25%相当で同額の返済を想定すると、7826万円の借り入れが可能となる。実際のところは、最近の超低金利で年収の8~10倍貸してくれる。つまり、年収約1000万円なら、8000万~1億円となる。ここまで借りても返済は滞ることなく、行えるのだ。もっと簡易計算をするなら、今の家賃の35年分(420カ月分)が目安となり、家賃20万円なら、420カ月倍の8400万円を借りることができることになる。
賃貸の場合、買ったらいくらなのかを調べてみる
そこで、改めてあなたの今の家賃の支払い状況を確認しておこう。家賃を払う場合には、その部屋を買ったらいくらするのかを調べる。分譲マンションを賃貸で借りるなら、そのマンションの売り出されている中古の事例を見てほしいし、マンション名で検索すれば、適正価格や周辺相場なども出ているサイトもたくさんある。
マンションの場合は、総じて年間家賃÷物件価格=利回りは3~4%になる。月の家賃の300~400倍で買える。420倍以下なら、35年(=420カ月)ローンで返せるので買ったほうがいいことになる。
最近は戸建て賃貸が増えてきており、利回りは6~7%もある。これも物件検索サイトで新築分譲戸建てを調べると出てくるが、家賃の171~200カ月分で買うことができる。買ったら、420カ月で返済することになるので、今の家賃は半額以下になる。
実例で説明しよう。4000万円の新築戸建てを月20万円、年間240万円払うとちょうど利回り6%になる。4000万円を住宅ローン金利0.4%で借りると、月返済額は10.3万円で半額になる。
住宅ローン控除の還付金は毎年28万円あるので、月割りで2.3万円となり、月返済額から還付金を引くと、月の実質支払い額は8万円となる。今の家賃の4割の支出で済むのだ。
リースバックには要注意
最近、戸建てをリースバックするビジネスが増えてきている。リースバックとは購入して住んでいる自宅を不動産事業者が買い取るので、いったん売却代金が入る。お金に困っている人は唯一の資産である自宅を売却して資金を手に入れる手段の1つである。その売却の際に、その自宅に住み続けるために家賃を払う契約も同時に結ぶ。家に住み続けながら、資金を手に入れることができるのだ。
しかし、だいたいにおいて不動産事業者が一生懸命やり始めている事業は気を付けたほうがいい。不動産事業者が儲かるということはその顧客になった人は損をするという構図になるからだ。
リースバックの利回りはなんと12%ある。手に入れた資金で家賃を払うにしても最大で8年強しか住むことができない。それだけ考えても持っていたほうが得であるし、資金繰りに困っている家族が数年後に家を失ったら、一家離散となるかもしれない。
そんなことをするくらいなら、別の方法はいくらでもある。通常に売却して、他の家に賃貸で引っ越したほうが家賃は半額程度になる。先ほどの戸建て賃貸の利回りは6~7%で、リースバックが12%なのは家賃が相場の約2倍であることを意味している。
ほかにも方法はある。リバースモーゲージという自宅を担保に入れてお金を借りる方法で、金利は3%ほどだ。これも自宅に住み続けることができるので、リースバックと比較したら、はるかにリーズナブルな方法となる。